副業禁止で退職率アップ!?副業解禁のメリットと課題とは?

副業禁止で退職率アップ!?副業解禁のメリットと課題とは?

こんにちは!人事組織コンサルタントの河畑福太郎です。

平成29年3月28日の働き方改革実現会議で決定した「働き方改革実行計画」では、副業・兼業の普及促進が盛り込まれ、これを踏まえて厚生労働省でもガイドラインの整備などが進んでいます。

 

これまで多くの企業で「副業禁止」とされてきたものの、この改革によって副業が国によって後押しされ、企業としても対応を検討していかなければならなくなっています。

 

人事としては「副業なんて認めたら、優秀な人が退職するのでは」と考えてしまう人が多いと思いますが、果たしてそうでしょうか?

 

そもそも副業とは

 

法的定義はなく本業以外に収入を得ていること

 

法的には、明確な定義はありませんが、簡単に言えば「本業以外で収入を得ている」ことを指します。
そのため、人によってその副業内容は様々です。
例えば、週末トレーダーやオークション販売、アルバイト、クラウドソーシングでの受注請負、内職などです。

 

大抵は、本業に対して割合の小さい収入を得ているものを指しています。

 

副業の目的と実態

 

2017年にエン・ジャパン株式会社が行った調査によると、副業に興味があると言った人は全体の88%にものぼり、そのうちの83%は収入を得る目的のためと回答しています。
次にスキルアップ(23%)、キャリアを広げる(17%)が目的として挙がっています。

 

出典 5,000名以上の正社員に聞く「副業」実態調査

https://corp.en-japan.com/newsrelease/2017/3537.html

 

ただし、実際にこれまでに副業をしたことがある、と回答したのは33%にとどまり、そのうち46%の人が副業収入が3万円以下という回答でした。

 

また、副業経験者のうち、現在でも副業を続けていると言う人は、38%にとどまっており、副業禁止の会社にお勤めなのにバレてしまったとか、マイナンバー制度の導入を機に(バレることを懸念して?)副業を辞めたというコメントが多かったようです。

 

副業OKの会社の割合

 

日本企業における副業の現状

 

平成26年に中小企業庁が調査したところによると、副業を「推進していないが容認している」という企業が14.7%、そして、「副業を推進している」という企業は、なんと0%と言う結果でした。

 

これは調査対象となった企業のうち、回答を得られた1,173社の状況なので、全国的に見て同じ状況とは言い切れません。
例えば、株式会社エンファクトリーでは、むしろ「専業禁止」を謡っています(笑)。

 

そうした企業もあるにはありますが、まだまだ副業解禁には程遠い実状なのです。

 

参照 中小企業庁委託事業 平成26年度兼業・副業に係る取組実態調査事業

http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/nyusatsu/2016/161128kengyo1.pdf

 

海外の副業事情

 

ここで海外の事情をご紹介すると、例えばアメリカは副業大国と言われています。
そもそも、社員のプライベートな時間を何に使うのかを規定すること自体が違法とみなされています。

 

景気の悪化や物価上昇のあおりで、副業をしないと生活ができないという人も大勢います。

世界的に有名なリゾート地のハワイでは、住居費や物価が上昇してしまったため、ロコ(地元っ子)は2~3個の仕事を掛け持ちするのは当たり前となっています。

 

また、アメリカでは年末調整のような仕組みはなく、自分で確定申告を行うため、会社に副業を知られにくいという一面もあります。

 

なぜ副業禁止の会社が多いのか

 

そもそもなぜ副業禁止なの?

 

もともとは、戦後旧労働省がつくった「就労規則」のフォーマットに副業禁止が盛り込まれていたというだけです。
その意図や目的はだれも分かりません。単なる見本ですから、あまり深く考えて作られてはいなかったのではないでしょうか。

その見本を企業がまねをしたため、ほぼすべての企業の就労規則に副業禁止が盛り込まれ、そのまま現在まで慣習化しているのです。

 

企業が副業を禁止する理由

 

とは言え、日本でも法的には「職業の自由」が約束されていますし、国家公務員以外は明確に副業を禁止する法律は存在しません。それなのに、なぜ企業は副業を禁止しているのでしょうか。

 

その理由には、大きく3つあると言われています。

 

1.本業への悪影響

副業による本業への悪影響です。
例えば、副業が忙しいあまり本業がおろそかになり、遅刻や早退が増えてしまったり、業務のパフォーマンスが下がるなどです。

 

2.情報漏洩リスク

競合他社などで副業をした場合の情報漏洩のリスクです。
本人はそのつもりはなくても、他社の業務を引き受けることでうっかり情報が漏れてしまう可能性があります。

 

3.優秀な人材の流出

副業の方が軌道に乗ってしまえば離職して独立してしまうかもしれませんし、副業で仕事を受けた先に引き抜かれてしまったり、スキルを身に付けて転職してしまうかもしれません。

 

会社側からみた社員が副業をするメリット

 

ところが、近年こうした副業に対するネガティブな考え方も違うんじゃないか?と言われてきています。
一体どういうことなのでしょうか?

 

株式会社サイボウズの事例

 

有名な事例として、サイボウズがあげられます。

 

IT業界の退職率は平均で20%前後なのですが、なんとサイボウズでは過去に約30%となってしまった時期があり、これに経営陣は危機感をつのらせ、次のような施策を行いました。

 

<サイボウズの人事施策>

・選択型人事制度・・・9つのワークスタイルを導入。各自のライフスタイルに合わせて自由に選択できるようにした

・育自分休暇制度・・・自分を成長させるための転職や留学などに対し制度を適用し、退職後6年間は復帰可能な「再入社パスポート」を交付

・副業の自由化・・・何がダメで何がいいのか?線引きが曖昧な時代背景に合わせて全面解禁

 

これにより、現在の退職率は数パーセントにまで低下した上に、副業社員からつながりのできた引き合い話も持ち込まれたりと、良い効果が表れているそうです。

 

働くモチベーションを与えるものは人それぞれ

 

ここまで一気に改革できたのもすごいと思いますが、そのきっかけとなった気づきは、「社員一人一人にとって何がモチベーションにつながるのかは別々なんだ」ということだったそうです。
ある人にとっては、がむしゃらに働いて給与を多くもらうことかもしれませんし、ある人にとっては、自分の能力を十分に活かしてくれる職務かもしれないのです。

 

また、公平性を保つために、働き方によって給与格差をつけたり、社員が欲しいと思う人事制度を社員自らが提案し、会社として採用していくという方法をとっているそう。
こうなると、社員が積極的に人事制度を利用し、自らが話し合って改善するという良い文化が出来上がり、人事に対して不平を言う社員はいなくなったそうです。

 

サイボウズが副業解禁で得たもの

 

サイボウズの例から分かることは、副業を解禁したとしてもデメリットよりも、むしろ社員の自主的な行動を重んじることによって、個々の問題提起や提案力など、ビジネスパーソンとしてのスキルを磨くことができたということに。

 

これは、退職率の低下以上に、企業としての人材資産価値が高まったと言えるのではないでしょうか。

 

どうしてサイボウズの社員は流出しなかったのか?

 

二つの理由があると考えられます。

 

ひとつには、副業は単なるスキルアップや個人的なチャレンジの機会ととらえている人が多いと言うことです。
会社は嫌いではないけれど、今の業務だけではスキルが陳腐化する、通用しなくなる、そんな不安を抱える人や、若いうちにしかできない経験をしておきたい、という人にとって、副業で収入を得ながら実践的スキルアップができることは大きなメリットです。

 

もうひとつには、先行き不安定な世の中で独立まではしたくない、と言う人が多いこともあるでしょう。
趣味や特技を生かしたビジネスがしたい、気の合う仲間とビジネスがしてみたい、そうは思っても、だからと言って欲しいだけの収入を得られるとは限りません。そのため、あくまでも副業にとどめておきたいのです。

 

副業解禁しないと退職率が上がる

 

反対に言えば、本業の中でできるスキルアップに限界を感じ、その会社での働き方に疑問や不安を抱える社員にとって、副業を禁止されてしまうと、それらの課題解決をするためには転職するしか方法が無くなってしまいます。

 

終身雇用制度が崩壊した現代で、常に先行きに不安を抱えて若い世代が、副業OK!の会社へ転職したくなるのも分かりますよね。そのため、副業解禁の流れに乗らないと、副業OKの他社への人材流出が進み退職率が上がる可能性が高まっていくことが考えられるのです。

 

企業にとっての副業解禁のメリット

 

副業によって、それぞれの社員が新しい分野のスキルを身に付けたり、経営感覚を養うことは、ひいては本業の仕事にも還元されます。
よく「社員一人一人が経営者のつもりで」という言葉を聞きますが、一社員であり続ける限り、実際にはそうした感覚を磨くことは難しいでしょう。

 

決して座学の研修では身に付けられないスキルを、本業で雇用している企業は研修コストをかけることなく、社員自らが取得してきてくれるのですから、考えようによっては、使ったほうがお得な制度とも言えますね。

 

副業を認める上での注意点

 

副業解禁にメリットはありそうですが、推進する上では次のような課題があります。

 

  • 労働時間の長時間化による過労や労災適用の課題
  • 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務の徹底
  • 雇用保険や社会保険料制度の課題

 

これを踏まえた上で、厚生労働省が示すガイドラインでは、企業が副業を導入するために検討すべきポイントを以下のようにあげています。

 

ポイント1.実状を踏まえた副業範囲や手続きの検討

 

会社が認める副業の範囲は、どういう内容で就業場所はどこか、どのような就業形態なのかなどを検討し、社員の副業状況の把握方法などを検討します。

例えば、自社の社員が副業として風俗で働いていたことが取引先に知られた場合にどのようになるのか?など、業種によっては非常にセンシティブな問題ですので、あらかじめ検討しておくべき内容となります。

 

ポイント2.労働状況にあわせた各企業での措置の検討

 

例えば、複数の企業で就業することによる長時間労働や健康状態の悪化などが懸念されています。
その場合、本業と副業の兼ね合いで、時間外労働や休日出勤の免除などの措置を各企業ごとに検討する必要があります。

 

ポイント3.副業内容の確認方法や確認点の検討

 

仮に社員が会社に対して副業申請をした場合、上司や人事はその副業内容が競業規定に抵触しないのか、副業の業務内容や、いつから、どれくらいの時間を副業に費やす予定かなどの確認が必要となります。
ただし、必要以上に社員のプライベートについて聞き出したりしてはいけません。そのため、どうやってこれらを確認し、どのように判断すれが良いのかの検討が必要です。

 

ポイント4.副業社員の健康状態の把握方法の検討

 

実際に副業をしている社員が長時間労働や過負荷になっていないか、健康を害していないか、本業に支障をきたしていないかを確認する必要があります。これらを把握するための、社員と企業の間でのコミュニケーション方法の検討が必要です。

 

まとめ

 

副業の解禁には、社員にも企業にもメリットがあるだけでなく、オープンイノベーションや起業につながるなど、社会全体としてのメリットもあると言われています。

 

課題はあるものの、実際に副業解禁で効果をあげている企業もあります。
こうした成功事例をもとに、それぞれの企業における実状に即した内容にブレークダウンしていけば、きっと導入することができるでしょう。

 

そのためには、企業ごとの現状を改めて明確に把握し、副業解禁のために何を変えるべきなのか、どう変われば社員にとって働きやすい環境となるのかを、社員とのコミュニケーションによって決定していくことが重要となります。

また、一度決めた社内制度や規定は、そのままでは形骸化してしまいがちです。
適宜見直しをしながら出てきた課題を修正し、より現実的な形にしていくことこそ、その企業に特化した人事の役割として求められていくことでしょう。

 

 

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