こんにちは!人事組織コンサルタントの河畑福太郎です。
近年のビジネスを取り巻く環境の急激な変化は、各企業におけるビジネスのあり方や運営方法、テクノロジーに至るまで、様々な対応を必要とされています。
競争が激しい現代において企業が生き残るためには、実際のオペレーションを遂行するそれぞれの部門においても、変化に合わせたドラスティックな変革が必要とされているのです。
今回は、人事業務の効率化によって人事の負担を軽減するツール導入によるメリットについて考えてみたいと思います。
人事は事務作業が多いという現状
人事業務の構造
そもそも人事の業務は、「人材マネジメント」と言う一言でくくられてしまうことが多いのですが、もう少しかみ砕くと、「ヒトという資産を使って企業が発展するための業務を企画・推進する業務」と言えます。
かつての高度経済成長を支えた「日本的経営」の代表的な要素として、終身雇用制・年功序列・企業別組合の3つがあげられることは有名ですね。
この経営方法は、長年日本の会社組織を支えてきました。そのため、人事の役割や業務としても、「ある程度出来上がった組織を運用するための存在」と化してしまっています。
その結果、多くの企業人事では、規則や制度、プロセスなどの整備を行うインフラ人事と、それを運用するための定常業務や不測の事態への対応などのオペレーション人事の2つの業務がメイン業務となっています。
人材企画と労務
さらに、人事業務は人材企画と人事労務とに分けられます。
人材企画は、採用活動から、評価、教育、人材配置などとなり、人事労務は、入退社の際の社会保険、健康保険、社員の健康管理、安全管理などの業務となります。
<人材企画>
- 採用活動・・・採用計画に則った採用活動を行います。SNSやイベントの企画・運営も行う場合があります。
- 社内研修・・・社員のスキルアップに必要な研修を精査し、実施・評価を行います。
- 評価・・・上司の主観に偏らないよう、評価制度の策定・評価の実施運営を行います。
- 配置・・・適材適所となるよう、人材移動を行います。配置や転勤・出向・転籍などを伴う場合もあり、社員の生活や給与への影響を考慮しなければなりません。
<人事労務>
- 入退社の手続き・・・入社や退社の際に必要な書面の作成や交付、健康保険証や社会保険の加入手続きなども行います。退社時は、必要なものの回収も行います。
- 勤怠管理・・・就業規則の策定や、社員の労働時間・休憩時間・休暇などについての状況を把握し、データ化します。
- 安全衛生管理・・・社員の安全や健康に関する定めを就業規則に条文化し、確認や必要な対応を行います。
- 給与計算・・・労働時間や、社会保険等によって変動する給与の計算をします。住民税等の源泉徴収計算も行うため、神経を使う業務です。
この様に見てくると、インフラ人事とオペレーション人事は、両者が密接に関係しあっていることが分かるでしょう。
例えば、整備された就業規則に則って勤怠管理が行われますし、評価人事制度に則って社員評価や報酬の決定がなされます。
また、実状に合わせて規則などの改定を行うということになります。
人事は事務業務にどれぐらい時間をかけているか
具体的な調査数値はありませんが、人事の人員が割いている業務時間の割合として、最も多いものが「オペレーション人事」です。
オペレーション人事は、社員の評価や報酬、安全や健康に直結するものでもあり、日々止められない業務だからです。
「今他のことで忙しいから今月の給与計算ちょっとまってね、遅配しちゃうよ」なんてことはあり得ないですからね。
そのため、どうしても人事の業務がオペレーション的な事務業務に追われてしまうということに。
それ以外にも、人事の日常は会議や面談、社外からの来客などの対応が多く、デスクに座っていられないという悩みを抱えている人も多いです。
限られた時間で、事務作業を終えるのが精いっぱいということも。
人事の役割が変わる?
戦略人事という考え方
そうした中、1990年代から「戦略人事」という考え方が提唱されてきました。
これは、時代の変化に合わせて変わっていく経営戦略を理解し、事業計画や目標を達成するために、必要な人や組織のあり方を実行していく人事ということです。
競争環境が変われば、企業が必要とする「モノ」と「カネ」が変わるように、「ヒト」も変えていく必要があるということなのです。責任をもってそれを実行していくのが戦略人事であり、経営層にとってはビジネスパートナーと言えます。
戦略人事に求められる能力
戦略人事であろうとするのであれば、当然のことながら経営戦略を理解できる必要があります。
経営者的視点を持ち、コミュニケーションを取れなければなりません。
そのためには、経営学や会計、業界の動向などにアンテナを張りながら、経営戦略を正しく理解する必要があります。
さらに、理解した内容を、人材マネジメントに変換(翻訳と言うべきか)できる能力が求められます。
また、これまでの慣習的な人事業務の進め方は、透明性や公平性、客観性と言った点に対応しきれない側面もあり、人材流出の原因にもなってきました。これに対し、より透明性のある人事を実現するための業務の可視化・データ化に取り組む企業も増えてきています。こうした背景から、ITスキルも必須となってくるでしょう。
今現在人事の業務に携わっている人からすると、「そんな工数なんてないけど、どうしよう!」という感じかもしれませんが、企業経営のためにそれをどう実現可能にするのか?ということを考えるのは他部門も人事も同じです。
そこで、まずは人事の事務作業軽減に効果的なツールを導入してみてはどうでしょうか?
ツール導入で戦略企画工数をひねり出せ!
HR Techで実現できること
HR Tech(HRテック)とは、HR(Human Resource)+ Technologyからなる造語です。
クラウドやビッグデータ解析、人工知能(AI)など、最先端のIT関連技術を使って採用・育成・評価・配置などの人事関連業務を行う手法のことです。
これらを提供するサービスごとに、勤怠管理や、給与計算、採用管理、人材育成など、人事が関わる様々な分野をサポートする機能が整備されています。
アメリカではすでに導入企業が増えており、HR Tech分野の市場成長も著しいようなのですが、、、2016年に行ったとある調査によると、採用・労務・給与・人件費以外の分野に関する人事業務において、データ分析の実行有無を聞いたところ、40~50%の企業が「実行していない」という回答だったそうです。
つまり、戦略人事が求められるようになってきた背景がありながら、日本ではツールなどのHR Techの導入が進んでおらず、従来型のオペレーション人事業務がメイン業務となってしまっている企業人事が多いということが分かります。
参照 日本の人事部 人事白書2016
https://jinjibu.jp/keyword/detl/806/
HR Tech おすすめツールとは?
海外サービスの日本展開や、日本のベンチャー企業などが新しいビジネス領域としてサービスを提供するなどで、日本においてもHR Techのサービスが続々と始まっており、導入しやすい土壌ができつつあります。
1.Wantedly(ウォンテッドリー)
Wantedlyは、国内大手の採用広報サービスです。
近年の採用管理は、私が就活をしたころのような企業合同セミナーや企業説明会の実施というものだけでなく、SNSなどを取り入れた、まさに現代型採用活動がなされています。
登録した学生にとっては、Wantedly上でつながっている仲間を見つけて情報交換をしたり、企業からのスカウトを受けることもできます。
また、チャット機能によって、学生と企業の人事担当者が直接Q&Aなどをすることによって、企業と学生の間の垣根を低くすることもできます。
URL https://www.wantedly.com/
2.ジョブカン採用管理
勤怠管理、ワークフロー、経費清算、採用管理、労務管理、給与計算の機能が備わっており、様々な対応ができる上に、シンプルで分かりやすいデザインが好評。
例えば、採用管理では、応募者のステータスや次の予定などが一覧化され、連絡漏れなどを防ぐこともできます。
すでに国内7,000社以上が導入済です。
3.jinjer
勤怠管理や労務管理、採用管理、人事管理のサービスを提供しています。
従業員の勤怠状況から、離職者傾向などを知らせてくれるエンゲージメントアラート機能と言ったユニークな機能も。
労務面でも、電子政府(e-Gov)の外部APIと連携することによって、人事が年金事務所などに出向かなくてもよくなります。
4.SmartHR
人事労務をサポートするサービスを提供しています。
こちらも、電子政府(e-Gov)の外部APIと連携しており、社会保険、雇用保険などの手続きをWebで完結させることができます。
年末調整なども、社員がスマホやPCで入力することができるため、紙の回収といった手間も省けます。
5.あしたのチーム
人事評価に特化した人材管理サービスです。どんなに人事が目標設定シートを用意しても、それを添削する上司が理解していなかったりすれば、活用できません。
目標設定の添削機能や、評価分析のグラフ化機能などにより、社員の納得がいきやすい評価を行うことをサポートします。
2017年度 HR Techクラウド市場「人事・配置」分野でNo.1の調査結果が出ています。
URL https://www.ashita-team.com/
6.airy
社内SNSの仕組みによって、社員の満足度向上を行い、モチベーションの向上や業務効率化、離職率の低下をサポートするサービスです。
日本企業にありがちな、縦割り組織のコミュニケーションを活発化することにより、社内の風通しがよくなり、情報交換が活発化します。
新人フォローなどの状況に合わせた対応も可能となって離職率の低下につながります。
まとめ
周辺環境の変化に合わせて変革の必要な企業経営。人材マネジメントにおいても、その必要性が高まっており、戦略人事としての役割を求められるようになってきました。
「ヒト」は企業経営に欠かせない資産であり、どんなに「モノ」「カネ」を状況に合わせようとも、
「ヒト」のマネジメント改革が進まなければ意味がありません。
我々人事は企業経営の一翼を担う存在となっていく必要があるのです。
ところが、実際には従来型のオペレーション人事の業務も多く、戦略人事としての活躍ができていない、
もしくは戦略人事として企画立案を行う工数がない、という担当者もいるかと思います。
ビジネスパートナーとしての戦略人事ということも言われていますが、まだまだ実際の日本企業における人事の立場はパートナーとは程遠い状況です。それには経営層の人事に対する既成概念や、多すぎる事務業務などによって人事が戦略企画をする工数がないなどの、環境的な理由によるものも多くあります。
しかしながら、最後は我々人事自身のマインドセットを変えていくしかありません。
人事としての成長目標を明確にしながら、取り組んでいく必要があるのです。
まずはとりかかりとして、現状の業務負担の軽減を目的としたHR Techの導入をしてみてはいかがでしょうか?
ツール導入によってすぐに得られるメリットの他にも、経営者的な視点でみれば、将来に向けての潜在的なメリットの方が大きい可能性が多分にあると言えなくもないでしょう。